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内科診療案内アトピー性皮膚炎とスキンケア

アトピー性皮膚炎とスキンケア

アトピー性皮膚炎とスキンケア
 環境病としての側面を色濃く反映するアトピー性皮膚炎においては、環境とのインターフェースである角層に対するケアがきわめて重要である。環境アレルゲンや微生物、掻破、あるいは発刊などの物理・化学的刺激などが、バリア機能の破綻した敏感肌に加わると、皮膚は炎症反応で対抗する。この環境と皮膚のせめぎ合いが本症の本態であるといっても過言ではない。素因としてのドライスキンは、キュアできなくともコントロールは可能である。スキンケアとライフスタイルについて検証してみたい。

スキンケアの位置づけ
 スキンケアを広義でとらえると、皮膚に炎症やかゆみをもたらすあらゆる刺激を表皮レベルで排除するか防御するケアということができる。これらのケアは、(1)アレルギー、非アレルギーを問わず、無用な刺激が皮膚に加わらないようなライフスタイル、(2)皮膚に加わってしまった刺激を炎症やかゆみを引き起こす前に、排除する、清潔を中心としたスキンケア、(3)最後の防波堤である角層レベルのバリア機能を補強して刺激の侵入を許さないためのドライスキンに対するケアの3つに集約することができる。
 スキンケアによって皮膚の素因を変えることはできない。また、すでに存在する皮膚炎症や皮膚感染症を抑えることもできない。これらの目的には、医薬品による治療が必要である。しかし、炎症やかゆみを起こりにくくすることや鎮静化した皮膚炎症を維持することは可能である。この意味では、スキンケアはまさにキュアよりもコントロールをめざすべきアトピー性皮膚炎治療戦略の要と位置づけることができよう。
 スキンケアを指導するためには、皮膚の生理と病理を熟知したうえで、アトピー性皮膚炎の病態との整合性を理解することが求められる。その際、「かゆみ」がキーワードになるものと思われるので、ここではまずかゆみのメカニズムから説き起こして、ライフスタイルの検証も含めたトータルなスキンケアを考えてみたい。


かゆみは重要な増悪因子
●なぜかゆみが起こるのか
かゆみは中枢性のかゆみと末梢性のかゆみに大別される。透析や黄疸にともなうかゆみの一部は、オピオイドペプチドといわれるモルヒネ様物質によって起こるとされており、いまだ治療には難渋する。しかし、アトピー性皮膚炎など多くの皮膚疾患にともなうかゆみは、マスト細胞が表皮ー真皮接合部に存在するかゆみの受容体に作用して生じる末梢性のかゆみである。マスト細胞からはヒスタミンをはじめとする多彩なメディエーターが遊離され、神経終末であるかゆみの受容体からインパルスが求心性C線維を上行して、大脳皮質で「かゆい」と認識される。
 したがって、末梢性のかゆみに対するストラテジーとしては、マスト細胞を刺激しないこと、マスト細胞からメディエーターを遊離させないこと(抗アレルギー薬)、あるいはメディエーターと拮抗すること(抗ヒスタミン薬)が挙げられる。


●なぜかゆいと悪いのか
 痛みが逃避反射をもたらすのに対し、かゆみは掻破行動を誘発するからである。アトピー性皮膚炎患児の臨床像(図3)をみると、手の届かないオムツ部には皮疹がないことから、掻破がいかに病像を修飾するかがよくわかる。
 では掻破はなぜ悪いのか?掻破により少なくとも3つの新たな変化が起こりうる。まず、単純に皮膚のバリア破壊が一層進むことである。出血をともなうほどの掻破痕は、角層のみでなく表皮全体が傷害を受けたことを物語っており、究極のバリア破壊ということができる。2つめの変化は、表皮細胞傷害によるサイトカインの放出である。IL-1やTNF-αなどはマスト細胞や血管内皮細胞を介して起炎因子となりうるため、炎症はさらに増悪することになる。サイトカインの放出は、掻破でなくとも角層剥離程度でもみられるので、日常的に増悪因子として作用しているものと思われる。3番目は軸索反射である。求心性C線維を上行したインパルスが一部逆行性に神経を下行し、神経終末からサブスタンスPなどの神経ペプチドが遊離され、新たな炎症が増幅される。
 このように掻破は病変を増悪させ、さらにかゆみを助長することになる。したがって、この重要な増悪因子であるかゆみを生活の中で回避し、あるいはスキンケアで未然に防ぐ方法について、次に考えてみたい。

ライフスタイルでかゆみを止める
●余分な刺激を回避すること
 敏感肌の人には、普通の人にはどうでもない刺激が余分な物理・化学的な刺激となり、かゆみや掻破を誘発することになる。したがって、ライフスタイルのなかからこのような余分な刺激を排除することが大切である。

●衣服や寝具など
 タートルネック、ハイネックのセーター、首回りのきつい襟、ゴワゴワしたジーンズ、下着の縫い目(反転して着用した方がよい)や金具、下着や靴下のゴム、長袖の袖口などに留意する。寝具では毛布のチクチク、糊のついたシーツや枕カバー、パジャマの襟なども要注意である。

●物理・化学的刺激
 前髪が前額に垂れたり、後ろ髪が頚部を刺激したりすることはしばしば経験するので、ヘアスタイルやシャンプーの残留には気を配る必要がある。食べこぼし、舌なめずり皮膚炎も、敏感肌に加わった刺激が原因である。耳切れは、丸首のシャツを脱ぐときに耳たぶに触れるためとする説もあるほどである。そのほか、発汗、水仕事、装身具、香水、紫外線などが刺激となることも多い。

●環境整備
 生活環境にはアレルゲンや汚れ、ほこりなど様々な刺激物質があふれているため、可能な範囲で整備を心がける必要がある。特にダニはふとん、じゅうたん、ぬいぐるみなどに多く生息しているので、天日干し、クリーナーによる吸引などを励行する。花粉の季節はマスクや防護メガネなども有用である。

スキンケアでかゆみを止める
 スキンケアは皮膚の炎症を改善するものではないが、外用薬によって改善した状態を維持したり、敏感肌を改善して皮膚の易刺激性を低下させることは可能である。

●清潔のスキンケア
 皮膚の汚れは皮脂膜に紛れ込んでいるので、石けんなどを用いて汚れを皮脂もろとも洗い流す必要がある。
 しかし、汚れは角層の外層に存在しているわけであるから、こする必要はなく、いわゆる「垢こすり」は誤ったスキンケアである


●乾燥のスキンケア
 アトピー性皮膚炎患者では、セラミドの減少などによりドライスキンが招来されるため、角層のバリア機能が障害される。ドライスキンでは、アレルゲンや微生物などの侵入が容易となるため、スキンケアによりバリア機能を回復することが大切である。
 清潔のスキンケアを優先するあまり、乾燥に対するスキンケアがおろそかになり、皮膚病変が増悪する事例にしばしば遭遇する。汚れを皮脂もろとも流す清潔のスキンケアと皮脂を補う乾燥のスキンケアは本来、相反するケアなので、この2つを両立させることが肝要である。

アトピー性皮膚炎のトータルスキンケア
 このようにアトピー性皮膚炎では、環境整備とともに角層レベルでアレルゲンや微生物を洗い流すこと、失われた皮脂を補うこと、余分な物理・化学的刺激を避けること、すなわち、なるべくシンプルライフを心がけることが重要となる。また、スキンケアはあくまでも寛解維持と増悪回避が目標であり、コントロールレベルの維持には抗アレルギー薬などによるかゆみの制御が、増悪レベルであればステロイド外用薬が必要であることはいうまでもない。

■参考文献
アトピー性皮膚炎
よりよい治療を求めて

日本シェーリング株式会社

 

 

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